無意識に罪を背負い罰を受ける(チリソース)
工学院大学八王子の近くにはインドカレー屋がある。そこのインドカレー屋はとても美味しく、雰囲気もいい知る人ぞ知る工学院大学近辺の名店である。先日、浦郷はプロジェクトの代表とともにそのカレー屋に行ったんだが、事件はその店で起こった。
浦郷はこの店に初めて入った時、前菜で出されたサラダにかかっているソースが気になって店員に
「サラダのソースは何ですか?」
と聞いたところ、
「サラダのソースはNoです」
と聞こえたらしく、その場でサラダを取り上げられ、ソースのかかっていないサラダを出された。
それがKogCoder内で話題になり、それ以来注文時には必ず、「サラダのソースはNoで」と言うようにしている。
その日も「ソースはNoで」と言ったが何故かサラダにソースがかかった状態できた。俺は代表と顔を見合わせ首をかしげたが、ソース付きの方がうまいなーと思いつつ、気にしないで食べた。
サラダとサイドメニューで頼んだチキンがきた後、メインのカレーとナンが到着した。その時、店員が「カレーソースです」と言い頼んだ覚えのない小さなカップに入った何かもテーブルに置かれた。
その何かはカレーの器を小さくしたような容器で、中にはカレーソースによく似た焦げ茶色のペーストが入っていた。これまで何度もこの店に来ていたが初めて見るその謎の何かに俺と代表は戸惑った。
新しい付け合せかな?、サービスかな?何かは分からなかったが 見た目は美味しそうなカレーソースだったので、俺はナンにその謎のソースをたっぷりつけて口に入れた。
入れた瞬間俺を待っていたのは舌を駆け巡る激しい痛みだった。
代表に「どう?どんな味?」と言われても口が開かない、本能が命ずるままにテーブルにあった水を飲んだ。口の中で水と何かが激しく主張あう。口の中に僅かな余裕ができている間に頭をフル回転させて自分の身に何が起こったのかを必死に考えた。
痛み、熱、そして苦しみ、やっと理解した。何か辛いものを食べてしまった。
俺はなんとかして代表にソースがとても辛いことを伝えた。普通じゃない表情とジェスチャー。彼は少し考えた後、今までに見たこともないスピードでメニューを手に取りこう言った。「これチリソースじゃね?」
チリソースとはカレーの辛さが足りないときに使うものである。この店ではチリソースは店員に頼んだときにのみ出てくるサービスであるが、なぜ店員は持ってきたのだろう。
その時に注文時の自分で言った言葉を思い出した。「ソースはNoで」
初来店時に聞き間違えられたように、どうやら店員は俺がチリソースを頼んでいるとと思ったようだ。
そっかー、チリソースってこんなに辛いのかーとか思っていたら気がつくとコップの水が無くなりかけていた。俺はコップの水を代表にアピールしながら水を飲まずに口に含んで時間を稼いだ。
口の中の水は最初はほのかな甘みを感じるほどに美味しいが、しばらくすると口の中にある辛味成分が解けていき、優しい水は凶悪なチリソース水に変わってしまう。舌はすでに限界を迎えいて、思考がとぎれとぎれになっていく。
店員が新しい水を注ぐ、俺は少量の水を口に含み大きく息を吸う。舌に纏わりつく痛みが引いていく。
ようやく落ち着いて話ができるようになった。代表と2、3会話をした後、カレーを一口食べる。
このカレー屋のカレーはそこまで辛くなく、今回頼んだのは豆カレーなので水なしでも余裕で食べられるはずだったが、食べても痛みしか感じなかった。
もはや熱を持つもの全てを辛いと感じてしまう。
結局カレーをちゃんと食べられるようになるまでかなりの時間がかかった。
ここから学んだ教訓として、
- 分からなかったら店員に聞く
- わからないものを口にいれてはいけない